「やってたら、できた。」
会社員としてデザインの仕事をしながら、「SASHIMI」の名前でイラストレーターとしても活動する黒澤希美さん。
結婚をきっかけに川俣町へ移り住み、現在は町内でのイラストの仕事やワークショップなど、少しずつ活動の場を広げています。
町のイベントでは似顔絵屋さんとして出店し、訪れた人の似顔絵を描くことも。
絵を描くことが、人と出会い、言葉を交わすきっかけにもなっています。
そして今月初めには、川俣町貸事業所「オリナスかわまた」で初めての展示会&似顔絵イベントを開催。
カラフルな作品を大きなパネルにして展示し、訪れた人の似顔絵を描きながら、たくさんの人と言葉を交わしました。
「色んな方とお話する機会になれば幸せです」
そんな思いから始まった展示は、絵を見てもらうだけでなく、人とつながる場所にもなりました。
けれど、川俣へ来たばかりの頃は、
「誰に話しかけたらいいのかわからなかった」
と 言います。
そこから、どうやって今の活動へつながっていったのでしょうか。
―川俣に来たきっかけは?
結婚です。
いわゆる「移住します!」という感じじゃなくて、夫が暮らしていたところに私ひとりが来たので、「ぬるっと増えた」感じで(笑)。
たぶん近所の人も、最初は私がいることを知らなかったんじゃないかな。
―すぐに川俣での暮らしに馴染めましたか?
いや、全然です(笑)。
会社の仕事も在宅なので、家で仕事をして、家で絵を描いて。
「誰に話しかけたらいいんだろう」という感じで、ずっと家にいました。
1、2年くらいそんなふうに過ごしてから、
「これでダメだったら、本当にもう関わらなくてもいいや」くらいの気持ちで、少しずつ外へ出るようになったんです。


川俣町の移住・定住情報を発信する「かわまた暮らし」のSNSや公式LINEなど、さまざまな発信の中にもSASHIMIさんの絵が使われています。
川俣で暮らし始めた頃は人との接点がほとんどなかったという黒沢さんですが、絵をきっかけに、少しずつ町とのつながりが生まれていきました。
―外に出るようになって、何が変わりましたか?
最初は、人と関わるための理由がほしかったんですよね。
地域の場所へ行ってみたり、支援センター(川俣町移住・定住相談支援センター)を訪ねたり。
その時は「マルシェをやってみたい」というような話を持っていったこともありました。
結局マルシェ自体はやらなかったんですけど、そこで私が絵を描いていることを知ってもらって、イラストの仕事をいただいたんです。
それがきっかけになって、
「あ、この人は絵が描けるんだ」
と少しずつ知ってもらえるようになりました。
そうすると、高校のワークショップに声をかけてもらったり、町の中から別のイラストの仕事をいただいたり。町のイベントでは似顔絵屋さんとして出店するようにもなりました。
ひとつの場所で知ってもらったことが、また違う人につながっていく。
川俣って、そういう距離の近さがある町なのかもしれません。

―SASHIMIとして活動を始めたのは?
10代の頃から、なんとなく絵は描いていました。
でも「イラストレーターになろう」と思っていたわけではなくて。
5年くらい前に初めて依頼をもらって、
「じゃあイラストレーターって名乗ってみようかな」
と思ったのが始まりです。
最初の仕事はSNSのアイコンでした。
最初は「絵も描けるし、お小遣いになればいいかな」くらい。
でも、もともと本が好きなので、だんだん「本に関わる仕事がしたい」と思うようになりました。
それでSNSで編集者さんを探して、自分からDMを送って。
そこから繰り返し声をかけてもらえるようになりました。
―ちなみに「SASHIMI」という名前は?
お寿司を奢ってほしいからです(笑)
好物が分かりやすいように。
「餃子5000個マン」という候補もありました。
でもちょっと強すぎるかなと思って(笑)

※本人未公認。AIが勝手に考えた「餃子5000個マン」
―今は会社員とイラストレーター、二つの仕事をしていますね。
そうですね。
会社ではデザインの仕事をしています。
会社の仕事も、SASHIMIとしての仕事も、私の中ではそんなに大きく違わないんです。
結局どちらも、何かをつくる仕事なので。
一日中会社の仕事をする日もあれば、朝から夕方までイラストを描く日もあります。
自宅だけでなく、オリナスのコワーキングスペースで作業することもあります。

―「SASHIMIらしい絵」は意識していますか?
前は、
「私はこれを描く人です」
と言えた方がかっこいいと思っていました。
でも今は、人に頼られて描く方が楽しいですね。
喜んでもらえたり、反応を見るのがうれしくて。
依頼される内容も本当にバラバラです。
でも最近、
「絵で頼んでいるというより、私だから頼んでいる人が多い」
と思うようになりました。
一度仕事をした人が、また別の仕事で声をかけてくれる。
それがうれしいですね。

これまでSASHIMIさんがイラストを手がけた品々
―今月は、オリナスかわまたで初めて展示会も開きました。

はい。
自分の作品はカラフルで鮮やかなものが多いので、大きくパネル印刷して並べてみると、
「大きくなるとワクワクするな」
と自分でも思いました。
似顔絵も描いて、いろんな方とお話することができました。
作品を見てもらえたり、気に入ってもらえたりするのは、やっぱりうれしいですね。
また機会があったら、展示や物販だけじゃなく、もっと楽しんでもらえる企画や空間もつくってみたいです。

壁いっぱいのイラストから、机に並ぶ小さなグッズまで。SASHIMIさんのカラフルな世界が広がる展示会場。
―これから川俣や福島で、やってみたいことは?
せっかく福島にいるので、
もっといろんな福島を好きになりたい
と思っています。
それに、イラストで人の役に立てることって、もっとあるはずだと思っていて。
福島の良さを伝えるような仕事や、地域の活動にも関われたらいいなと思っています。
―これから、どんなイラストレーターになりたいですか?
うーん、わからないです(笑)。
私、あまり先のビジョンを持って生きてこなかったんですよ。
そもそも「イラストレーターになりたい」と思ってなったわけでもないし。
描いていたら依頼をもらって、お金をもらえるようになった。
だから、
「やってたら、できた」
という感じです。
川俣へやってきた頃は、誰に話しかければいいのかも分からなかった。
それが今では、自分の作品を並べ、人を招き、似顔絵を描きながら話をする場所をつくっています。
その間にあったのは、大きな決断というより、
「ちょっと行ってみよう」
「ちょっとやってみよう」
という、小さな動きの積み重ねだったのかもしれません。
会社員をしながら、イラストレーターとして仕事をする。
全国から仕事を受けながら、川俣でも人とつながる。
どちらか一つに決めなくてもいい。
暮らしが変われば、働き方だって変わっていい。
その時の自分に合わせながら、仕事も暮らしもつくっていく。
「やってたら、できた」。
そんなふうにして、SASHIMIさんの次の何かも、また始まっていくのでしょう。
SASHIMI(さしみ)|イラストレーター
福島県を拠点に活動する、レトロファンシーイラストレーター。
親しみやすくカラフルなタッチで、カットイラストや似顔絵、キャラクターデザイン、ミニアニメーションなどを手がける。食べ物と組み合わせたキャラクターデザインも得意。
ハリセンボン official YouTubeチャンネルのOPアニメーション、声優・伊達さゆりさんのMV、書籍の挿絵、横浜ビールのラベルなど幅広く制作。ASAHI飲料「和紅茶イラストコンテスト」優秀賞を受賞し、「GENSEKI Art Book 2024」にも作品が掲載されている。
川俣町でも似顔絵やワークショップ、地域のイラスト制作など、絵をきっかけに活動の場を広げています。
Instagram
https://www.instagram.com/izu_0tome/
各SNS・活動リンク
https://lit.link/izu0tome
