川俣のてっぺんで、風と暮らす。

2025.07.04 更新 カテゴリ:BLOG

 

── 忘れ物をしても、ここに戻る理由。

 

朝、玄関の鍵をかけてから、財布を忘れたことに気づく。
5階まで、また登る。

そのとき、ちょっと笑ってしまうのは、慣れたからなのか、
それとも、もうあきらめがついているからなのか。

 

川俣町にある団地の5階。
ここに暮らしているのは、町の地域おこし協力隊としてやってきた、大井さん。

町が用意する「移住・定住促進住宅」としてリノベーションされたこの団地に、今は一人で暮らしている。

住まい探しに出遅れた移住初期、ようやく見つけた部屋が、ここでした。

「最上階なら静かだろうなと思って。
でも、まさかこんなに毎日運動になるとは思いませんでした(笑)」

 

ひとりには、ちょっと広すぎる部屋

 

部屋は1LDK。
和室は物置にして、残りのスペースで寝たり、食べたり、ちょっと作業をしたり。

でも、決して「使いきれない広さ」ではなくて、
暮らしていくうちに、ちょうどよく体に馴染んでくる。

「収納も多くて、クローゼットもふたつ。寝室とリビングを無理やり分けて使ってます(笑)」

 

〈朝日が入る、東向きのリビング。やわらかい光に照らされた部屋が、一日の始まりを知らせてくれる。〉

 

「窓を開けると、風がよく通るんです。
エアコン、あんまり使ってないかもしれません。
夜は涼しいし、虫の音も遠くから聴こえるくらい」

間取り詳細:https://kawamata-gurashi.jp/residential/

 

網戸は、ない。

この部屋の唯一の困りごと、それは「網戸がないこと」。

「こればっかりは困りました。虫、来ます。ふつうに(笑)」

 

それでも彼は、昼間は窓を開ける。
気持ちのいい風が入ってくると、自然と体が緩む。
台所に立ったり、趣味をたのしんだり、なんでもない時間が流れていく。

 

 

ベランダで育つ、黒イチジク

 

 

ベランダには、小さな鉢植えがひとつ。
イベントでもらったという黒イチジクの苗木。

「こいつはボコボコ増やしていいやつらしいです。育てがいがあるっていうか…まあ放置でも元気です(笑)」

 

前職が造園業だったという大井さん。
苗木を見つめるまなざしが、どこか穏やかだった。

 

山に、ぽつりと咲く桜を見て

 

春になると、窓の外の山の斜面に、ぽつぽつと桜が咲く。

「遠くの山にひとつ咲いて、またひとつ咲いて。
ああ、季節が巡ってるんだなって思うんです」

 

その景色が好きで、毎年楽しみにしている。

 

〈暮らしの中に季節がある。〉

「川俣って、そういうふうに馴染んでいく町」

 

「川俣で暮らしてよかったなって、最近ようやく思えるようになりました。
スーパー行くと、おばあちゃんに話しかけられるんですよ。
“あ、私も刈り上げてるよー”って(笑)」

最初はちょっと驚いた。
でも、髪型のことをきっかけに、町の人と会話が生まれるのがなんだかおもしろい。

ふとしたところで、顔を覚えられている。

そういう関係が、この町ではあたりまえにある。

 

〈ここで暮らしている証のように、少しずつ生活道具が馴染んでいく。〉

 

「ここでいいや」って、ちゃんと思える

 

「最初は“3年くらい住めればいいかな”くらいだったんですけど。
思ったより快適で、“まあ、ここでいいや”って思えるようになりました」

 

今後は戸建てへの引っ越しも考えているという。

「小さくてもいいから、庭のある家に住みたいですね。
畑まではいらないけど、少し草いじりができるくらいの」

 

落ち着ける場所を見つけるということ

風が抜けて、光が射して、知らない誰かに名前を覚えられる。
そんな暮らしのなかで、少しずつ“落ち着ける場所”になっていく。

「移住って、ちょっと大ごとだな」って最初は思ってました。
でも、案外、こういう“仮住まい”から始めてもいいのかもしれません。

この団地のように、川俣町では移住者向けのリノベーション住宅が用意されています。
団地の最上階じゃなくても(笑)、風通しのいい暮らしが待ってるかもしれません。

 

 

文章・写真:鈴木亮平(川俣町在住・移住者フォトグラファー)

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