2025.08.15 更新 カテゴリ:BLOG
―空き家購入と改修、そして暮らしの記録―
なぜ川俣を選んだのか:移住体験ツアーで見た、自然の景色
「移住って、現実的にはどうなんだろう?」
そんな思いで参加した福島県川俣町の移住体験ツアー。
都会での暮らしに、少しずつ疲れを感じていたご主人。
忙しさと、家賃の高さと、ギュッと詰まった毎日に、
「このままでいいのかな」と思うこともあったそうです。
ちょうどその頃、仕事がリモートワークに切り替わったことで、
住む場所の選択肢がぐっと広がりました。
そんなときに出会ったのが、川俣の風景。
広い空、風に揺れる木々、どこかゆるやかな時間の流れ。
「こんな暮らしもあるんだな」って、思ったそうです。
一方、奥さまは福島市の出身。
はじめは福島への移住に渋い顔であったが、ツアーで触れた町の空気や人のやさしさ、
自然の景色に、心から「めっちゃいい!」と思ったと話します。
それぞれにとって違う視点からの出発だったけれど、
「ここでなら、自分たちらしい暮らしができるかもしれない」
そんな確かな気持ちが、ふたりを川俣へと向かわせたのでした。
空き家との出会いと改修のこと:古い家に、あたらしい命を。
移住支援センターの紹介で、何件か空き家を見てまわりました。
その中で、「あっ、ここかも」と感じたのが今の住まい。
外観はごく普通の一軒家。でも中に入ってみると、家全体の広さや、ちょうどいい距離感のある間取り。

どこか落ち着く佇まいの廊下
築50年弱の家を手に入れて、二人の新しい暮らしに合わせて少しずつ手を入れました。
古い家ならではの味わいを大切にしながらも、安心して快適に暮らせるように。
床を貼り直して、窓は二重にして、浴室はまるごとリフォーム。
なかでもお気に入りは、真っ白でピカピカになったお風呂場です。
扉を開けると、まるで別の世界みたいに清潔で気持ちよくて、毎日の疲れがスーッと癒やされる場所になりました。
補助金も上手に使いながら、予算のなかで満足のいくリフォームができたのも嬉しいポイントです。
古い家の温かみは残しつつ、少しずつ、自分たちにとって心地いい空間へ。
この改修は、そのはじめの一歩だったんです。
床やお風呂のビフォーアフターを見れば、変わりようは一目瞭然。
住む人の目線で丁寧に整えられた家には、どこかホッとする空気が流れています。

改修前の浴室

新しく生まれ変わった浴室。足を伸ばして入れる快適な空間に。
暮らしながら整えていく:壁の色も、これから決める
すべてを一度に整えるのではなく、「暮らしながらちょっとずつ」がこの家のスタイル。
今も、塗り替えていない壁がそのまま残っていて、「このままもいいけど、これから色を決めて、塗っていこうと思ってるんです」と笑います。
壁だけじゃなく、お庭や小さな収納、棚の位置まで、「こうしたいな」が出てきたタイミングで少しずつ手を入れていく。
そんな暮らし方も、この場所だからこそできる自由さかもしれません。

庭には、季節ごとの花や木々がのびのびと茂り、そっと季節を教えてくれます。
それぞれの部屋:ミシンとソファ、好きなものに囲まれて
夫婦それぞれに、ゆったり使える部屋があります。
奥さんは洋服づくりが趣味。服飾学校で学んだ経験を活かして、ミシンを置いて、好きな布を広げて作業する部屋があります。
オリジナルのブランドタグも作っていて、静かに「好きなこと」と向き合う時間が日常にあります。
ご主人の部屋は、デスクとソファが2つ。
リモートワークができる職場に転職してからは、この部屋で作業する時間も増えました。
窓からの光がよく入って、休憩の合間にふと外の山を眺めるのも、ちょっとした癒しになるそうです。
時間の流れ:散歩が日課。働く時間と暮らす時間の境目がゆるやかに
関東にいたころは、散歩はあまり好きじゃなかったそうです。
アスファルトの照り返しがきつくて、歩いても暑いだけ。
自然を感じることはほとんどなく、「歩こう」という気持ちになれなかったと言います。
でも川俣の暮らしは、それをすっかり変えてくれました。
今では、ふと外に出て歩く時間が日々のささやかな楽しみ。
お気に入りは家の近くの参道。季節ごとに景色が変わる道をゆっくり歩き、
自然の音や匂い、風のかたちを感じることができるそうです。
特に春。桜の季節には、並木道がほのかに色づいて、歩くだけで心がほどけていくよう。
「ほとんど独り占めみたいに桜を楽しめるんです」とふたりは嬉しそうに話してくれました。
働く時間と暮らす時間の境目は、都会よりもずっとゆるやかで、一日のリズムは自然と一緒に動いているように見えます。

ご自宅のすぐそばには山があり、豊かな自然に包まれています。
最後に:のびやかに暮らすことを選んだ私たちから
都会の便利さやスピード感も、それはそれで魅力です。
でも、「暮らし」に焦点をあてたとき、川俣の空気が自分たちにはちょうどよかった。
やりたいことは、これから少しずつ増やしていけばいい。
家庭菜園もそのひとつ。地域のイベントや行事に関わることも、今は楽しみのひとつになっています。
こちらでは、仕事も生活も、全体にゆったりと時間が流れていて、
気づくと、今まで頑張っていたことや、急いでいたことをふっと忘れてしまうような感覚になります。
そのぶん、自分のペースや「自分の時間」を大事にできるようになった気がします。
だからこそ、これからもゆっくり、のんびりと、生きていきたいと思うんです。
ここでの暮らしはまだ始まったばかり。
手を動かしながら、話しながら、ときには迷いながらも、
たしかに、自分たちらしい「暮らし」がここに根づいてきています。

二人の暮らしを記録していこうと、手に入れたトイカメラ。これからどんなふうに写るのか、たのしみですね。
文章・写真:鈴木亮平(川俣町在住・移住者フォトグラファー)